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21.06.2020ドイツ人の「足と靴の健康」に関する理解

現在、整形靴職人としての訓練に励んでおられる参加者さんから、ドイツにおける整形靴について教えていただきました。
日本ではあまり馴染みのない整形靴ですが、ドイツではもっと身近にあるものだというのがとてもよくわかる内容になっています:

【参加者の声:整形靴製作】
ドイツでの職業訓練を検討している際、「製靴」ではなく「整形靴」の記事が目に付くのではないでしょうか?
もちろんドイツにも普通の製靴業は存在しますしそれに伴い職業訓練(Ausbildung)もあるようです。
しかし、ドイツでは圧倒的に「整形靴業」の方が盛んです。
これにはドイツの強力な健康保険システムとドイツ人の「足と靴の健康」に関する理解が大いに関わっていると思います。
もし、市販の靴が足に合わなかったり痛みなどの症状がある場合、ここドイツではまずかかりつけの医師に相談します。
整形靴の作製が妥当だと診断された場合、医師の処方箋を持って整形靴マイスターのもとを訪れ、症状に合った靴の制作をすると言うのが整形靴制作の一般的な流れです。
つまり整形靴と言うのは「医師の処方の元に制作される靴(歩行補助器具)」という定義になります。
そしてこの処方箋があれば靴制作の費用のほとんどを健康保険によって賄えます。
条件によって異なりますが、弊社の場合、二十数万円の制作費が数千円程度の自己負担で済むケースが多いです。
この保険制度のおかげでドイツでは少しでも不調を感じた場合は気軽に医師に相談し、足に合った靴の制作を行えます。
日本でも同じ様な保険システムがありますが、ドイツはより寛容だと言えるでしょう。
また、日本では「義肢装具士」の範疇にあたる整形靴ですが、ドイツでは「整形靴職人(Orthopädieschuhmacher)」が専門の資格として存在するあたり、靴によって足の健康を管理するという考えが浸透しているとも言えます。
この様にドイツでは整形靴業がとても盛んで、多くの整形靴業者が店を構えています。小さな田舎町にも一軒は整形靴屋があるくらいです。
そして、患者の分母が多い事で必然的に数多くの症例に日々触れる事ができます。
実際、何かを勉強するだけなら母国語で学んだ方が効率が良いと思いますが、執刀歴や飛行時間の長さで技量の過多を計る外科医やパイロットの様に、やった分だけ技術は向上する事は確かです。
見習いのうちから日本とは比較にならないくらい多くの制作事例を目の当たりにできる事こそ
日本ではなく本場ドイツにて整形靴の職業訓練を行う最大のメリットと言えるのではないでしょうか。
自分自身、2年目でありながらすでに数え切れないほど靴の吊り込みや底付けをしてきて「量は質となる」事を実感しています。
靴を制作する他に既成靴をカスタムしたり、中敷きによって問題を解決する場合もあります。
特に中敷き(Einlagen)はドイツ整形靴の大きなテーマの一つですので別の機会に詳しく説明できたらと思います。
以上、ドイツでの整形靴と職業訓練のメリットを自分なりにまとめてみました。
整形靴の仕事は2つと同じものがなく、難しくもあり面白くもあります。
この記事を通して少しでも興味を持っていただけたら幸いです。

写真
足の長さが異なる患者の厚底靴

ドイツ整形靴
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