23.07.2020参加者の声:ドイツは整形靴のメッカ
整形靴ゲゼレプログラムの参加者です。NGESの奨学金制度を利用し、2018年4月よりドイツへ渡り、約4ヶ月半ミュンヘンにある語学学校にてドイツ語を学び、同9月より現在の職場で職業訓練を開始しています。
30歳を過ぎ全くの別業種への、さらには海外への挑戦ですのこちらに申し込むまでにかなり悩みました。人生で一番悩んだかもしれません。渡独して一年を経過した段階ですが、現状を含めレポートさせていただきます。このプログラムに興味のある方のご参考になれば幸いです。
ーなぜ靴職人を目指そうと思ったのか
私は既成靴が合わないことが多く、「オーダーメイドの靴とはどのようなものだろう」という単純な興味から始まり、働きながら趣味として靴教室に通い勉強を始めました。
そこで作った初めての靴は自分用の簡易的なものでしたが、木型からしっかり合わせた靴はこんなにも足に馴染むのかと感動したのを覚えてます。
革が化けると書くように、平面だった革がいくつもの工程を経て立体の「靴」になって行きます。その複雑でありながら無駄のない工程に魅了され、段々と靴職人への道を本気で考えるようになりました。そして本格的に学ぶのならば、本場ヨーロッパで学んでみたいと思う様になりました。
−ドイツは整形靴のメッカ
靴職人として海外での修練を考えた場合、イタリアやイギリスの製靴学校や靴工房での修行というのが一般的かと思います。実際に有名紳士靴ブランドを始め、大小の靴工房で修行をされている日本人の方も多くいらっしゃると伺っております。私もはじめはイタリアで靴作りを学びたいと考えていましたが、整形靴の存在を知りドイツでの職業訓練に参加することに決めました。
整形靴というのは日本ではあまり馴染みがなく目にする機会も少ないですが、足の機能障害や形状変化を抱えた方に向けた歩行機能補助の役割に特化した靴を指し、ここドイツはその本場です。顧客の症例に合わせて補強の具合や靴底の形を変えるので、2つと同じ靴はなく、とても奥が深いです。イタリア靴のようにファッション性の高いものを作る機会は少ないですが、医療的なアプローチから最適解を探る整形靴という分野は、その分責任も伴いますがとても有意義な仕事であると感じます。また、ドイツは保険制度も充実して購入者の金銭的負担も軽く、オーダーをしやすい環境が整っているため、製作数が日本とは桁違いです。実際に多く判例を経験できるのも本場であるドイツにて靴作りを勉強するメリットと言えます。
また、Ausbildungとして働きながら学べるのこともプログラム参加を決めた大きな要因となりました。Ausbildungは多くの手仕事の業種に適応され、学校と職場で相互に学びながら実習をするデュアルシステムという方式を採っています。職業訓練中も少額ながら一定の給与と有給などの福利厚生が保証されます。最終試験に合格すれば国家資格「ゲゼレ」として職人を認められ、労働者はプロフェッショナルの自覚をもって働くことができます。手仕事分野における後継者の確保や手仕事の衰退を防ぐ大変有力な制度だと感じます。
Ausbildungの詳細はまた別の機会に話すとして、次回はドイツ整形靴の特徴をもう少し詳しく書いていきたいと思います。